カリフォルニアの青い空 ― 15.English as a Second Language の授業

赤井田拓弥がカリフォルニア州 Palm Desert にある College of the Desert に留学していたときに起きた、さまざまな出来事をエッセイ風に書いています。


砂漠の町に着いた翌日、つまりアメリカに着いた日の翌々日から大学に通うことになった。住み始めたアパートは大学のすぐ近くだったので、歩いて通えた。10分くらいだった。

授業は8時半に始まった。

最初の日、placement test があった。日本人の場合よくあることだが、当初、特にリスニング力やスピーキング力が弱いため、下のクラスに入れられることが多い。私もご多分に漏れず、いちばん下のクラスに入れられた。

ところで、English as a Second Language というプログラムと English as a Foreign Language とは違う。 現在、アメリカの多くの大学で留学生を受け入れて行っている授業は後者である。前者は、移住者のための授業である。

Palm Desert という町はカリフォルニア州の南部にあり、100マイルそこそこでメキシコとの国境である。English as a Second Language というのは、アメリカに仕事を求めて住む、あるいはアメリカ人の家族として住む非英語話者のためのプログラムである。つまり、母語のほかに英語を使えるようにするプログラムである。

先に移住した家族や親類を頼ってアメリカにやってきた人たち、アメリカ人と結婚した、まだ英語が十分に使えない人たちが、多く授業を受けていた。また、ベトナム戦争も影響していたのか、ベトナムからの難民も何人か授業を受けていた。

ベトナム戦争は、この前年の1975年4月に終結していた。戦前の南ベトナムでは政府高官だったという人とその息子もいた。

こうした人たちの中で、いちばん下のクラスは英語能力がほぼゼロに近い人たちが受けるクラスだったのである。英会話能力は私と同じくらいだが、読み書きと文法力は、ほとんどない。
このクラスに入れられたことは、私にはかなりショックだった。

前にも書いた、スーパーやデパートがアパートの近くにないと思ってしまったこと、とてつもなく暑いところだということ、そして、いちばん下のクラスに入れられてしまったことなどなどとも相まって、またしても、この大学を選んだことを後悔した。

しかし、授業料が無料だという大学をほかに調べていないので、どこにあるかも分からない。また、あったとしても、おそらく状況は同じだろう。そう考え、少し我慢してみることにした。

そして、1週間もしないうちに、「Takuyaは、このレベルではない」と判断してくれ、5段階くらいあったクラスの上から3番目くらいに入れてくれた。
そしてまた、それから1か月もしないうちに、いちばん上のクラスになった。

いちばん上のクラスの文法とライティングを受け持っていた先生は、当時20代後半で私より少し年上の女性だったが、この先生の文法の教え方とライティングのこまめな添削のおかげで、私の英語力は大きく伸びたと、今ではほんとうに感謝している。

ESL の責任者だった先生と、この女性の先生とは、今でも交流がある。

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