第二言語習得に臨界期なんてあるのか?

 何年か前、青梅市の梅園が病気で伐採されるというので見に行った。そのとき、2組の東南アジア系の母子を見かけた。

 母親は共に30代の半ばあたりで、子どもたちは共に小学校の低学年という感じだった。母親同士は彼らの国の言葉で話していたが、子どもたちは日本語で話していた。この光景から、「子供は言語習得が早いからなぁ」と言うのは早計である。
 同じ国の出身であろう2人の大人が連れ立ってやってきたことから察するに、この母親二人は、ふだんもいっしょに行動することが多く、あまり日本人とは接触していないのだろう。逆に、子どもたちはおそらく日本の小学校に通っており、学校では当然、日本語で授業を受け、ほかの日本人の子どもたちと日本語を使って接していると思われる。この親子の場合、日本語に接する時間が圧倒的に違うはずである。

 海外赴任した家族のうち、親よりも子のほうが英語を早くうまくしゃべれるようになったという話もよく聞く。これも結局、上記のようにどれだけ多く現地の人たちと接したかだろう。海外赴任すると、小さい子の場合は、保育園などに通わせる。小学校以上になると、現地の学校に通わせるのがふつうである。日本語学校に通う子も多いだろうが。

 それと、子どもたちが早くうまく英語をしゃべれるようになったとは言え、その内容を話題にする人はあまりいない。現地の同学年の子たちと同じレベルの内容を話しているかどうかは、あまり知らないだろうし、話題にしない。

 第二言語習得(母語でも)の時期を話題にするときによく使われるのが、レネバーグが1967年に主張した「言語獲得の臨界期」説である。それによると、言語の臨界期は10~12歳前後であり、その時期を過ぎると急速に言語習得能力が衰えていくという。そして、英語教育者の中には、この説を取り上げ、なぜか「10~12歳を過ぎると外国語の習得ができなくなる」という話をする人も多い。

 「臨界期」を検索したところ、Wikipedia に次のようなくだりがあった。

 2000年に Robert DeKeyser がハンガリー人の移民コミュニティで、英語能力とアメリカ合衆国への移住時期、および外国語学習に関する適性の調査を行った結果によると、16歳以前にアメリカへ移住した人は、みな高い英語力を示したのに対して、それ以降の年齢で移住した人については個人の素質によって言語能力に差がみられたという。

 これを読んで「ほら、やっぱり臨界期があるではないか」と思う人も多いかもしれない。しかし、これも上で述べた理由とまったく同じだろう。

 16歳以上になると、無差別に誰とでも接触して会話する傾向が少なくなってくる。自分と考えが同じだったり似ていたりする人と接触するようになる。なので、16歳以降に移住すれば、現地のアメリカ人たちより、いっしょに移住した自国民たち、あるいはアメリカで知り合った自国人との接触がより多くなるのは明白である。そうすれば、当然、上の Wikipedia の結果になってしまう。 


 言語の臨界期説で取り上げられる説に、オオカミに育てられた姉妹の話が有名である。
 これはしかし、一般人の言語習得能力とは関係がないのではなかろうか。なぜ親は姉妹を捨てたのだろう? 知的能力があまりにも低すぎて、親は絶望し、悲観したのではないだろうか。つまり、生まれてからそのまま育てられても、言語習得もままならなかったのではないかと、私は勝手に考えている。

 さて、近年、外国語習得能力は、大人と子供のあいだに差がないという説が有力になってきている。ある学者によると、50歳を超えた大人のほうが、逆に、外国語習得能力に優れているとも言われている。これは、理性で考えながら外国語を習得していくからだそうだ。

 大人で、現在、英語をマスターしたと言われ、英語業界で有名な人たちの多くは、10~12歳以前に英語を学んだ人ではないと言っても過言ではなかろう。

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