「北上、南下」と back east、out west

テレビで天気予報を見ていて、「前線が北上」とか「南下」という言葉を聞いて、「北上、南下」という日本語はいつできたのだろう」と思った。
 地図の上の方が北で下が南なので、ふだんはあまり気にしたことはなかったのだが。

江戸時代の地図(古地図)には、西が上になっているものが多い。なので、地図をもとに「北上、南下」という言葉ができたのであれば、それは明治以降のことだろうと思ったのである。

しかし、「上、下」の使い方は、「上り電車」や「下り電車」と同じ発想だった。もともと地図とは関係がなかった。つまり、都があるところ、天子(天皇)がおわすところに向かうのが「上り」である。
江戸時代、権力は京都にいる天皇よりも江戸にいる将軍のほうにあったが、「京に上る」、「江戸に下る、東に下る」と言っていた。

 昔から、これは中国でも同じで、天子の内裏(天皇が暮らす宮城のこと)は、中心都市の北の奥まったところの高台にあり、宮城に行くには、物理的に「北に上っていく」のだった。そして宮城を出て帰る南に下がっていく(物理的に低いところへ行く)ので、「北上、南下」という言葉ができたのであった。

 英語でも、北は up north といい、南は down south というが、これはたぶん壁に貼った地図をもとにした言い方だろう。

 東は back east、西は out west という。こちらは、アメリカの開拓者たちから生まれた表現である。ヨーロッパからアメリカ大陸の東海岸に上陸した先駆者たちは、その後、西に向かって開拓していった。なので、「西へ」が out west となったのである。
 back east は、We are going back east to visit my wife’s parents for Christmas. のように使うことが多い。つまり、「出身地に戻る」という意味合いで back が使われているので理解しやすい。しかし、カリフォルニアで生まれ育った人でも、I’m going back east on a business trip. と言うことがある。自分の生まれ故郷の方に向かうわけではなくても back を使う。

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