カリフォルニアの青い空 ― 28.アルバイト諸々 ― 1

初めてのアルバイト

 留学生のアルバイトは、大学内や特殊な例を除いて、基本的に禁止されている。語学留学生は、まずアルバイトはできない。

 しかし、多くの学生が何らかの隠れたアルバイトをしていた。

 私も、そもそも持ってきた金も多くなかったし、車も買ってしまったこともあって、手元不如意になり始めていた。親にも無心の手紙を書いたりしたが、自分でも稼がないと、とても暮らしていけない。

 ある日本人の先輩が、日本出身の人が経営する植木販売店の離れのような家に住んでいたこともあり、私もときどきそこを訪れていた。そして、その経営者とも親しくなった。

 その経営者は中木原さんといい、私と同じ鹿児島出身の人だった。

 この植木販売店の経営者のことを、私たちは「ナースリーさん」と呼んでいた。nurseryには「保育園」という意味のほかに「種苗店」という意味もある。

 アメリカで初めてのアルバイトは、庭師のようなものだった。上記の先輩が長いこと庭師のアルバイトをやっており、彼についていったのである。人家の庭の木の枝を切ったりする仕事だった。

 行った家で、庭にいた小学校1年生くらいの女の子に Did you eat lunch? と訊いたところ、怪訝な顔をされた。

 私の発音がまずくて理解してくれなかったのか、「なんでこの人はお昼を食べたか」なんて意味のないことを訊くのかと思ったのか分からない。あるいは、Did you have lunch? のように haveを使うべきだったか。

 このバイトには、福岡から来ていた私と同い年の古賀くんという友人もいっしょに行った。ナースリーさんのピックアップトラックを借りて行き、落とした木の枝を積んで帰ってきた。

 「ご苦労さん」ということでビールをごちそうになっていると、ナースリーさんが「あの木の枝を dump yard に捨ててきてくれ」と言う。

 「えっ? もう飲んじゃいましたけど」と言うと、「別にちょっと飲んだくらいでは運転してもかまわんよ」と言うので、dump yard の場所を聞いて、私がピックアップを運転して古賀くんと出た。

 州道を走っていると、バックミラーにパトカーの警告灯が点滅しているのが見えた。

 古賀くんと「ヤバイよ。飲んでるよ。しかも、運転席にビール缶もあるし」と、ややパニック気味ながら、ピックアップを路肩に寄せて停まった。

 「パトカーに停められても、運転席から下りてはいけない」と聞いていたので、運転席で神妙に待っていると、

 「荷台から木の葉やゴミが吹き飛んでいるから、飛ばないようにもっと踏み固めろ!

というスピーカーからの指示だけだった。免許証も見せなくてよかった。まだその時は州の運転免許証ではなく、国際免許だった。

 この日のアルバイト料をいくらもらったのかは、なぜか覚えていない。

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