「飛行機が陸上自走する」という意味の動詞 taxi の語源

 1970年の映画に 『大空港』 というのがあります。バート・ランカスターやディーン・マーチン、ジャクリーン・ビセットといった、古い映画好きの人には懐かしい俳優たちが勢揃いの映画です。

 エンディングに近いところに、次のセリフがあります。
 
管制塔: Do you need a tow, or can you taxi, over?
副機長: We can taxi.
 
 taxi に「飛行機が地上走行する」という意味があることを知らないと、「えっ!? タクシーがどうしたの?」となるかもしれませんね。
 
 We can taxi. の字幕は「大丈夫だ」となっています。「自走してエプロンまで行けます(から、大丈夫です)」ということです。適確な訳ですね。

 
 さて、「飛行機が陸上を走る」という意味の taxiがどのようにしてできたのかを調べてみました。

 まず、料金を取って客を運ぶ taxi のことを cab とも言いますが、歴史的には cab のほうが古いようです。cab は cabriolet(幌付き二輪馬車)の略で、1650年頃から使われ始めたようです。

 そして、乗る 「タクシー」 の taxi はフランス語の taximetreから来ているようです。metreの最初の -e- には、左上から右下へのアクセント記号「アクサン・グラーヴ」が付きます。

 語頭の taxi- はもともと taxeで、「料金を課す」という意味です。ネットで有名な辞書には 「メーターは tax(税金)を計算するものだったので taximeterと呼ばれた」 とありますが、間違いでしょう。
 taxe にも 「税金」 という意味はあるようですが、最初から税金のことを考えた車とは考えられませんから、「料金を課す車」と考えるのが妥当なところでしょう。

 taximetreが英語に採用され、やがて taxiだけを取り出し、それに上で述べた cabを足して taxicabとも呼ばれるようになったわけです。
 最初は、ラテン語の taxa に meter を付けた taxameterだったようですが、自然に taximeterに変わっていったようです。
 そして、taxi だけや cab だけで使われて、現在に至っています。

「飛行機が陸上自走する」という意味の taxi はどのようにできた?

 さて、taxi が「飛行機が陸上走行する」という意味で使われ始めた経緯ですね。1911年頃だそうです。

 ライト兄弟が初めて飛行機の飛行に成功したのが1903年ですから、わりとそのすぐあとですね。

 飛行機のパイロットを育てる訓練は、1911年より2年くらい前の1909年あたりから始まっていました。そして、訓練用の飛行機には2種類あって、1つは実際に空を飛べる飛行機で、もう1つは地上滑走しかできない、翼の短い飛行機です。

 訓練生たちは、最初、翼の短い飛行機に乗って地上を走らせ、飛行機というものに慣れる訓練をします。

 このとき、教官と2人で飛行機に乗って地上を走っているさまが「タクシーに乗っているようだ」ということで、こうした訓練を taxiingと呼ぶようになり、次第に taxiが動詞として使われるようになっていったそうです。

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